規格 · 6 · 2026-06-05

ISO 2768-mK vs fH:CNC部品に適した公差規格の選び方

間違った公差クラスを選ぶと加工コストが20–40%増加します。実際の寸法例を用いて、mK(一般加工)とfH(精密級)の使い分けを解説します。

Key takeaways

ISO 2768-mK vs fH:CNC部品に適した公差規格の選び方

CNC加工において、公差規格の選択はコストと品質を左右する最も重要な判断の一つです。特にISO 2768は国際的に広く採用されている一般公差規格であり、その中でも「mK」と「fH」は頻繁に比較されるクラスです。しかし、これらの違いを正確に理解せずに指定すると、不要な加工コストの増加や、逆に機能を満たさない部品が生まれるリスクがあります。本稿では、実用的な寸法例と数値データを交えながら、両クラスの特性と適切な使い分けを解説します。

ISO 2768-mKとfHの基本構造と数値の違い

ISO 2768は、特に図面に個別公差が指定されていない寸法に対して適用する一般公差を規定しています。mKとfHは、この規格内で異なる「公差等級」と「許容差クラス」の組み合わせを表します。

まず、記号の意味を分解します。ISO 2768-mKにおける「m」は「medium(中級)」を意味し、これは寸法の許容差を示す等級です。一方「K」は幾何公差(形状、位置、姿勢)の許容差クラスを表します。同様に、fHの「f」は「fine(精密級)」、Hは幾何公差の高精度クラスを意味します。

具体的な数値を見てみましょう。例えば、呼び寸法が30mmを超え120mm以下の範囲における直線寸法の許容差は、mクラスでは±0.3mm、fクラスでは±0.15mmと、ちょうど半分になります。また、面取りやRの許容差も異なり、mKではR0.5mm以下の場合に±0.5mm、fHでは±0.2mmと、より厳しくなります。

幾何公差の面では、mKの平面度は呼び寸法30mmを超え120mm以下の場合に0.5mm、fHでは0.2mmと、こちらも2.5倍の差があります。つまり、fHはmKと比較して、寸法公差で約2倍、幾何公差で約2.5倍厳しい規格と言えます。

実務におけるmKとfHの使い分け:コストと機能のバランス

ここで重要なのは、高精度クラスを常に選べば良いわけではないという点です。実際のCNC加工現場では、公差が厳しくなるほど加工時間が増加し、工具摩耗や検査工数も増えるため、コストが大幅に上昇します。経験則として、mKからfHに変更すると、加工コストは20~40%増加します。特に、複雑な形状や深穴加工を含む部品では、その差はさらに顕著です。

例えば、ある機械設計者が、筐体の外装カバーを設計する場合を考えます。このカバーは、外観品質と組み立て時のクリアランスが重要ですが、高い位置決め精度は要求されません。このようなケースでは、mKを指定することで、十分な品質を保ちながらコストを抑えることができます。具体的には、外形寸法200mmのカバーであれば、mKでは±0.5mmの公差で問題なく機能しますが、fHでは±0.3mmとなり、加工時間が約30%増加する可能性があります。

一方、精密な摺動部品や、他の部品と干渉してはならない軸受けハウジングなどでは、fHが適切です。例えば、直径50mm、長さ100mmのシャフトと嵌合する穴を持つ部品では、mKの±0.3mmでははめあいが不安定になり、ガタつきや焼き付きの原因となります。fHの±0.15mmであれば、安定したすきまばめを実現でき、機能を満たします。

また、材料や加工方法も考慮すべき点です。アルミニウム合金(A5052)のような軟らかい材料は、むしろmKで十分な場合が多く、逆に焼き入れ鋼(S50C焼入れ)のような硬い材料では、熱処理後の歪みを考慮してfHを指定する必要があります。

図面記号の正しい記入方法と注意点

ISO 2768を図面に指定する際の記号は、ISO 2768-mKまたはISO 2768-fHのように、ハイフンでつなぎます。この記号は図面のタイトルブロックまたは一般注記に明記します。しかし、注意すべき点は、この規格がすべての寸法に一律に適用されるわけではないという事実です。

例えば、ある寸法に特に厳しい公差が必要な場合、その寸法には個別に公差を直接記入するべきです。ISO 2768はあくまで「一般公差」であり、重要な機能寸法をカバーするものではありません。実際の設計現場では、ISO 2768-mKを基本としつつ、重要な箇所だけに±0.05mmなどの個別公差を追加する、というハイブリッドな使い方が最も効率的です。

また、幾何公差の指定にも注意が必要です。mKの「K」は、平面度や直角度などの幾何公差が中程度であることを意味します。もし平面度が特に重要な面があるなら、その面に対しては別途幾何公差を指示する必要があります。同様に、fHの「H」は高精度ですが、それでも特定の面に対しては個別の幾何公差を設けるべきケースがあります。

さらに、加工業者とのコミュニケーションも重要です。図面にISO 2768-mKと書かれていても、加工業者が「m」と「K」の意味を正確に理解していない場合があります。特に海外の工場とやり取りする場合、または初めて取引する業者には、簡単な説明や参考表を添付することをお勧めします。

実践的な選択フローとコスト最適化のポイント

それでは、実際にCNC部品を発注する際の判断フローをまとめます。

第一に、その部品の機能を明確にします。部品が他の部品と接触するか、摺動するか、あるいは単にカバーやブラケットとしての役割か。接触や摺動がある場合、その箇所の公差はfH以上を検討します。単なる外装やスペーサーであれば、mKで十分です。

第二に、材料と加工方法を考慮します。前述の通り、軟らかい材料や切削性の良い材料(例えばA6061、真鍮)はmKで十分な精度が出やすいですが、硬い材料や薄肉形状はfHでも歪みが生じる可能性があります。その場合、熱処理後の追加工や、応力除去焼鈍を工程に含める必要があり、コストがさらに上がります。

第三に、コストとリードタイムのバランスを取ります。fHを指定すると、加工時間が増えるだけでなく、検査工程も増えます。通常、mKでは抜き取り検査で済むところ、fHでは全数検査が必要になることもあります。このコスト増加を考慮して、本当にfHが必要かどうかを判断します。

第四に、図面には必ずISO 2768-mKまたはfHの記号を明記し、さらに重要な寸法には個別公差を追記します。これにより、加工業者に意図が正確に伝わります。

最後に、信頼できる加工パートナーを選ぶことです。例えば、私たちAndas Precision(広東省東莞に拠点を置く工場直販型CNC加工サービス)では、ISO 9001認証を取得し、AIによるDFM(Design for Manufacturing)解析を自動化しています。このシステムにより、お客様が指定した公差クラスに対して、加工性の評価と最適な加工条件の提案をリアルタイムで行います。例えば、fHを指定された部品に対して、AIが「この形状ではfHを達成するために追加の工程が必要です。代替案として、この面だけmKに緩和すればコストが15%削減できます」といった具体的な提案を提供します。

結論:適切な公差選択が品質とコストを両立させる

ISO 2768-mKとfHの選択は、単なる記号の違いではなく、部品の機能、材料、加工方法、そしてコストに直結する重要な設計判断です。mKは汎用的な加工に適し、コストを抑えたい場合に有効です。一方、fHは精密な機能が要求される箇所に限定して使用すべきです。

実務では、まず部品の機能を分析し、必要な箇所だけに高い公差を割り当てる「段階的アプローチ」が最も効果的です。そして、図面への記号の記入ミスを防ぎ、加工業者との認識を一致させることが、スムーズな製造とコスト最適化の鍵となります。

実践的なチェックリスト: - 部品の機能を明確にし、接触・摺動部を特定する - 材料と加工方法を考慮し、必要な公差クラスを選定する - 図面にISO 2768-mKまたはfHを明記し、重要な寸法には個別公差を追加する - 加工業者に規格の解釈を確認し、必要なら説明資料を添付する - コスト試算を行い、過剰品質になっていないか検証する

このチェックリストを活用し、適切な公差指定で、高品質かつコスト効率の良いCNC部品を実現してください。

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